汗の汚れを知ろう | 汚れの種類について | 東京都クリーニング生活衛生同業組合

汚れの種類について

汗の汚れを知ろう

気付いたら襟(エリ)が黄色に変色していた!ポロシャツの肩部分や背中がなんだか白っぽいような...。
これらは汗が影響する汚れです。では、汗汚れを避けるにはどうしたら良いのでしょうか。
このページでは汗を学んで、汗汚れがもたらす衣服への影響を紹介しています。

汗の役割

人間は、健康的生活を送る為に体温の調節を行う必要がある動物です。
しかし、人間の身体は発達した生理機能をもっており、自動的に身体に必要な熱を生みだす機能(産熱)と自動的に熱を人体の表面から外へ逃がす機能(放熱)のバランス調整を行い、外気温に左右されず安定した一定の体温を維持出来ます。そしてこの体温調整は、何時でも何処にいても絶えず行われているのです。

汗って?

伝導
そうした体温調整に欠かせないのが、今回のテーマである「汗」なのです。
熱の伝わりには、一般的に4つの要素があります。それは「伝導」「対流」「放射」「蒸発」と言われる要素です。そして、例えば人間は夏の暑い日など外気温が体温より高くなると、蒸発だけが唯一の放熱手段となります。つまり、この「蒸発」を行う「汗」は、人間が生活するうえで大事な機能なのです。

『目に見える汗』と『蒸発している(目に見えない)汗』

ところが、私たちが「汗」を感じるのは往々にして、身体を流れ落ちる「汗」ではないでしょうか?
汗が絶えず蒸発を繰り返していることで体温調整を行っていることをお話しましたが、身体を流れ落ちるということは、汗が液体となり皮膚のうえを滴り落ちている状態と言えます。つまり、「蒸発」はしていなということです。
一方、普段の生活の中で「蒸発している汗」を感じることはありません。その理由は、人間の皮膚には水を感じる感覚が備わっていないからと言われています。
試しに、サウナに入って実験してみてください。目をつぶっていて、いつ汗が出はじめたのか、わかりますか?つつつーっと汗が流れた瞬間に「あっ、汗が出ている」とわかりますが、汗をかいたのがいつなのかはわからないはずです。

つまり、「汗」の水分は目に見える状態のものと目に見えない状態があるということをしっかりと理解しておくことが重要です。

ちなみに、体温調整における汗の役割は、実は「蒸発」しなければ役に立たず、体温調整の点では液体の汗は無駄な汗になってしまいます。

汗と衣服の関係

さて、ようやく汗と衣服の関係性についての話に入りますが、衣服を着用する人間にとって、「汗」が衣服に様々な影響をもたらしたり、衣服を着用することで「汗」に影響を与えることがあります。つまりそうした「汗」と「衣服」の関係を私たちは知る必要があり、上手に「衣服」と付き合うことが求められています。

汗に対する衣服の役割

汗の放出過程
『衣環境の科学』(田村照子編著 建帛社、2004)
の図版を参考に作図。

身体からは、絶えず「汗」が放出しています。
ところが、汗の放出を衣服を着用することで妨げられると、衣服内の湿度は上昇します。更に、暑い夏の日の外など、気温が高い状態でかいた汗が蒸発しにくくなると衣服内の蒸れ感が高まり(湿度が上がり)不快感が強くなります。
そこで、衣服にはそうした人間の汗の働きを考慮して、汗を蒸発させやすい素材の商品や「吸湿性」「吸水性」の優れた商品などが開発されています。

蒸発後の衣服の状態がポイント!
ところが、ここで重要なのが、「汗」が蒸発するといっても、蒸発するのは水分のみで、汗に含まれる塩分などは皮膚や、吸湿・吸水した衣服、あるいは残留汗の付着した衣服に残るということです。
また、多くたまると後から出てきた塩分の濃度が高まり、汗の蒸発速度が遅れるだけでなく、粘りも生じほこりや垢などが付着するということです。つまり、これが「汗汚れ」の基本です。
こうしたことから、たとえ一度しか着ていない服でも、必ず汗が衣服に付着している為、早めに洗うことが何よりも大切です。では、もう少し「汗汚れ」について解説しましょう。

思いがけない汗汚れ

汗の成分の99%以上は水分で、固形分は1%くらいであり、その大部分を塩化ナトリウムが占めています。その他に、アンモニア、尿素、乳酸などが含まれています。また、汗の成分は水溶性であるため、汗が衣服に付着した後迅速に水洗いを行うことによって、ほぼ汗は取り除くことができるとされています。ところが、それでも起こる汗汚れ...。一体どうして汗汚れが起きるのでしょう。
水洗いしたのに残る汗汚れとは?

白いワイシャツなどが顕著な例ですが、襟(エリ)やカフス部分が気付いたら黄色く変色していた!なんてことを誰しもが経験したことがあるかと思われます。自宅の洗濯機で水洗いしているのに、何故黄変してしまうのでしょうか。
理由は、たとえ通常通りに洗濯機で水洗いをしても、汚れが落ち切れていない為であることと、洗濯する前に既に繊維に変化が起きている為なのです。初期段階は見た目では分かりませんが、そうした汚れや変化が時間と共に蓄積し、黄変などの変化で表面化したということです。

人体の皮膚からは、汗だけでなく水では溶けにくい「皮脂」や「垢(あか)」や「角質」といったように様々な分泌物が出ています。つまり、衣服の着用時や洗濯する前の段階で、汗の成分に加えて他の皮膚からの汚れとがお互いに作用し合い、しかも空気中の酸素が加わることで繊維に化学反応を起こしています。これを「酸化」と言い、衣服の繊維を変質させるのです。
しかも、この「酸化」という作用は、紫外線の影響を受けると加速することが分かっています。

そのようなことから、付着した汚れが酸化する前に、洗濯して落とすことが何よりも重要なのです。

衣服の染料と汗と日光による変化

例えばブルー系のポロシャツの肩や背中部分が、気付いたらまだらに白っぽく変色していた!なんてことはありませんか?
これは、汗の成分と紫外線の複合作用で、綿などの染色に多く用いられる反応染料と反応し、変色が起きた為です。

まとめ

今まで述べてきた汗汚れの原因は、普段の生活の中でほとんど避けられないことがおわかりいただけたと思います。
そこで、やはり求められるのは、汚れを早く確実に落とすということです。
理想は、一度着用した服は、水洗いだけでなく油溶性汚れを落とすドライクリーニングも行うことが、汚れを最大限落とすことが出来、衣服を変色等から守ります。
ただ、ドライクリーニングが出来ない衣服や、水洗い出来ない衣服なども広く販売されていることから、非常にシビアな判断が消費者にもクリーニング業者にも求められる、実は難しい汚れなのです。

参考:機関紙「水の文化」

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