顔料というのをご存知ですか?衣服に色を染める材料には、大きく分けて2種類あります。それは、「染料」と「顔料」です。この2つは、衣服に色が染まるという面では同じですが、その仕組みを知ると大きな違いがあるだけでなく、その特徴上、避けられないデメリットがあります。2つの染料の違いを理解して、色落ちについて考えてみましょう。
染まり方の違いを知ろう
通常、衣服に色が染まっていると、全ての衣服が繊維の奥まで染料が浸透していると考える方が多いかと思われます。ところが、これ以外にも衣服に色を染める方法があるのです。
染料で染める方法
「染料」を使用した染色のメカニズムは、繊維に染料を化学的に結合させて染色するため、繊維の内部にまで染めることが出来ます。つまり、これが「染料」を使用した染色方法です。
顔料で染める方法
「顔料」を使用した染色のメカニズムは、色の付いた細かな粒子状の物体を樹脂(接着剤)の力を借りて繊維の表面に接着することで染めています。つまり、これが「顔料」を使用した染色方法です。
染料染色=分子で染める方法
顔料染色=粒子で染める方法
特徴の違い
上の写真を見ると分かる通り、「染料」は繊維の奥まで色がしみ込み、適切な加工を施すことで、洗濯やクリーニングを行っても基本的には繊維から色が抜け出さない安定性を保つことが出来ます。
一方「顔料」は、繊維に接着剤を用いて色の粒子をくっつけてる状態であるため、万が一何らかの作用でくっついてる状態から剥がれてしまうようなことがあれば、"色落ち"として状況が表面化します。
顔料染色の特徴を詳しく知る
特徴1 接着剤=樹脂がもたらすデメリット
「顔料」は繊維に接着剤を用いて色の粒子をくっつける状態であることは説明しましたが、その際ポイントとなるのが接着剤の役割を担う"樹脂"についてです。この樹脂の接着力が弱ければ、色は落ちやすくなります。また、樹脂は主にポリウレタンが使用されている為、ドライクリーニングを行えば樹脂が溶け出し、顔料の粒子が剥がれ落ちて、結果的に色が落ちてしまいます。
参考:ポリウレタン素材の弱点を知る
特徴2 混ぜて色を作ることによるデメリット
実際の染色では、単色の顔料で色を出すことは殆どなく、何色かの顔料を混ぜて色が作られています。右の写真は茶系の色をした衣服がドライクリーニングを行ったことにより、均一な緑色系に変色したものです。茶系統は、赤系統・黄系統・青系統の顔料が適量に混ざり合ってできています。
この例では、赤系統の顔料が主に抜けてしまったため、残った黄系統と青系統の顔料で緑色に見えるようになったものです。
このように、顔料製品はドライクリーニングによって、混ぜ合わさった色の一部だけが抜け落ちることもあることを、理解しておく必要があります。
特徴3 メーカーの試験方法や知識不足による問題
アパレルメーカーは、商品を企画して店頭へ届ける前に、製造前後で「洗濯にどの程度耐えられるか?」を調べたうえ、お客様に正しい取扱い方法を伝えることが生産者側の責任と考えられますが、残念ながらこの試験もメーカーによっては、しっかり行っているケースもあれば杜撰(ずさん)なケースもあるようです。
中には、試験方法が、実際の商業ドライクリーニングと同じ条件ではなく、揉み作用や叩き作用を加えない方法で行っているにも関わらず、「通常のドライクリーニングに耐えられる」と安易に判断し、誤った判断に基づいた取扱表示を付けてしまうということが多くあります。
その結果、通常のドライクリーニング処理を行ってしまい、色の変化を引き起こす事故が増えています。
顔料の特性を受け入れる
以上のように、顔料染色は様々な問題を含めていますが、それでもメーカーが商品によって染料ではなく顔料を使用するのは、消費者にむしろ「色落ちを楽しんでもらう」という意図もあるようです。つまり、顔料の弱点を受け入れることで、衣服を楽しみましょうということだと考えられます。
しかし、そうした生産者側の意図は得てして一方的なことも少なくありません。衣服の楽しみ方は千差万別です。
まとめ
顔料を使用した衣服を見分けるポイントとしては、色使いが特徴的な商品を疑ってみて下さい。
顔料は、多様な色使いを消費者ニーズと考え、また、染料による染色で表現出来ない色を表現したいデザイナーの意図やメーカーの意図に基づき、使用されると考えられます。
そこで大切なのが、顔料のデメリットを受け入れながらも、目の前にある特徴的な色使いをした衣服を購入するべきか、それとも、受け入れずに購入を控えるか、という判断が求められます。
これからは、衣服を購入する時は、染色方法にも是非注目してみてください。