秋冬モノにある素材で「ベルベット」「別珍」「ベロア」「コーデュロイ」など特徴的な生地があります。
独特の手触りで光沢感を生み出すものや、厚手で暖かいものなどがありますが、これらは総じて「パイル(添毛<てんもう>)織物」といいます。このページでは、パイル織物でも「ベルベット」「別珍」について解説いたします。
パイルとは
まず、パイル(添毛)織物とは、生地の表面に下地から繊維を織り出した織物をいいます。表地に織り出された繊維は、ループ状にしたものとカットされて毛羽になっているものに分けられます。ループ状になったものはいわゆるタオルが身近なアイテムといえます。
一方カットされて毛羽になっているものが、今回紹介するベルベットや別珍が身近なアイテムといえます。ちなみに、タオルでもループ状なのをカットした「シャーリング」という加工製品があり、タオルでも独特の滑らかな風合いが特徴的です。
「ベルベット」と「別珍」は別の織物と考えること
では「ベルベット」と「別珍」に話を進めます。
「ベルベット」と「別珍」は見た目は同じように見えますが、作り方や構造、使用される繊維などが異なる関係上、取扱い方や注意点は異なります。各々の特徴を知っておきましょう。
別珍 | ベルベット | |
---|---|---|
パイルの作り方 | 緯糸でパイルを作る | 経糸でパイルを作る |
使用される繊維 | 綿・ポリエステル | 絹・レーヨン・アセテート |
毛足 | 比較的短い | 比較的長い |
手触り | 比較的硬い | 柔らかい |
光沢感 | 比較的落ち着いている | 強く美しい光沢 |
水分や圧力 に対する強度 | 比較的丈夫 | 非常に弱い ・少量の水分でも簡単にパイルが倒れる。 ・イスに座ると汗と体温の作用を受けて潰れる。 |
立毛の 復元可能性 | 素材が綿であれば、ある程度復元出来るものもあるが、合成繊維は戻せない。 | 素材が絹であれば、ある程度復元出来るものもあるが、合成繊維は戻せない。 |
フロック加工という植毛タイプの存在も要注意
ベース生地(織物や編物)表面に接着樹脂を塗布し、これに短く切ったパイルとなる繊維を植毛したもので、静電気を応用することで垂直に接着されるので均一なパイルとなり、ベルベットや別珍と一見間違うものもあります。接着加工によるものであることから、若干風合いは硬くなります。取扱い上の注意点
パイル織物である「ベルベット」や「別珍」はその生地の特徴からある程度避けられない変化を及ぼすことを覚悟しておくのが賢明です。パイル(毛羽)の脱落
別珍はカジュアルな衣服で使用されているケースが多いですが、衣服を着て行動することで避けられないのが「摩擦」です。そして、別珍はこの摩擦に弱いのが大きな特徴でもあります。
つまり、摩擦による物理的な作用でパイル(毛羽)が消失することはよくある事例です。
コーデュロイパンツや別珍のスカートなどでは、裾まわりやズボンの膝裏、ポケット口、腰付近や臀部など、また上着類では衿まわりや衿先、袖口などはよくパイルが消失する代表例といって良いでしょう。
そして、元々着用摩擦により劣化していた部分がクリーニング処理で毛羽が完全に脱落するトラブルも、よくある事例です。
テカリ
これもパイル(毛羽)の脱落と同様、着用摩擦により肘、膝、臀部などはパイル(毛羽)が潰れて光ってきてしまいます。ある意味カジュアルな着用をする限り避けられない現象ともいえます。
それ以外の注意点
ベルベットなどは、生地の構造上シミ抜きが困難なので、シミを作らないよう注意しましょう。また、保管方法においても出来るだけ畳まないことがポイントです。長時間畳んだ状態で放置しておくとパイルが寝てしまったままクセがつくので、要注意です。